(質問)
ツアー用のボールに使われている「キャスト・ウレタン」とは何ですか?
(ディーン・スネルの回答)
キャスト・ウレタンは非常に優れたカバーです。
現時点ではベストの素材であると、私は考えています。
キャスト・ウレタンが初めて採用されたのは、95年に日本で販売されたタイトリスト「ツアー・プレステージ」です。
その後Professional、プロV1に取り入れられました。
まさにツアー選手のためのカバーと呼ぶべき素材で、Professionalはメジャーで勝っただけでなく、選手に数多くの優勝をもたらしました。
ところで、ツアーボールの多くにはウレタンカバーが採用されています。ウレタンカバーと一言でいいますが、実は2種類あることはご存知でしたか?
それは、「熱可塑性ウレタン」と、「熱硬化性ウレタン」です。
はっきり言って、全く異なる素材です。
まず、熱可塑性ウレタンについてです。
英語ではThermoplastic Urethane、略してTPUと言います。
これは、熱を加えると形が変わる(=可塑性)ウレタンです。
扱いやすいため、スマホのケースなど、日用品に幅広く使われています。
もう一つは、熱硬化性ウレタンです。
英語では、Thermoset Urethane、略してTSUと言います。
その製法から、キャストウレタンとも呼ばれます。
これは、熱を加えると固まるウレタンです。
一度固まってしまうと元に戻すことができず、扱いは簡単ではありません。
さて、ゴルフボールの話に戻ります。
ブリジストン、スリクソン、キャロウェイなどはTPU(熱可塑性ウレタン)をカバーに使っています。
これは、押出し鋳込射出成形の固形ペレットを使っています。
ウレタンの固形ペレットを型に入れて、熱を加えながら射出成形します。
だいたい、50秒で8個のボールを作ることができます。
もし不具合が出れば、塗装を剥がし、TPUを溶かして作り直すことができます。熱で溶かすことができるからです。
また、一般論としてカバーは厚めです。
これが、熱可塑性ウレタン(TPU)です。
一方の TSU(熱硬化性ウレタン)は、液体です。AとB、2種類の液体を混ぜ合わせて30秒から60秒待つと、固まって、元には戻りません。
化学的に結合するために、溶かすことができません。
不具合が出ると、スクラップです。
そうした問題があり、お金もかかります。
液体のTSUを入れた鋳型にコアを乗せ、TSUを入れた別の鋳型を上からかぶせてボールの形にします。この部分が「キャスト」という工程です。
いろんな工程を経ると、ボール一個を作るのに20分かかります。
TPUは50秒で8個作れますが、TSUでは20分で1個しか作れません。
しかし、TSUのキャストウレタンはカバーを非常に薄くできますし、
耐久性はTPUとは比較になりません。
TSUキャストウレタンは柔らかくすればするほど、耐久性が上がりますが、
TPUでは柔らかくすればするほど、耐久性が落ちてしまいます。
現在この技術でゴルフボールを作っているのは、タイトリスト、テーラーメイド、スネルゴルフがあります。